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とある蛇足の思考実験(ゲダンケン)

思考実験(gedankenexperiment)。テレビ放映された「とある」シリーズをベースにあれやこれやといろいろと妄想を膨らませてみるBlog。

   

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オープニングの話

 たくさんのページの向こうに朧気に見えるインデックスさんの顔、そして反らしていた視線をはっきりとこちらに向けてくる上条さんの顔。
そして学園都市を背景に左右からスライドしてくるタイトル。
次のシーンから、右方向に動きが展開します。スフィンクスが左向きに映像に入ってきますが、ダメ押しであるかのように抱え上げた姫神さんが右に視線を向けます。これは上条さんの軌跡を追っているのですね。インデックスさんに出会ったところで缶を踏み、倒れる動作がインデックスさんに向かう上方向の動きを描きます。
ここから終局に向かって、左右に振りながらですが画面は上方向に向かっていきます。神裂さんの登場が思ったよりも自然に見えるのは、ステイルさんの咥えタバコの煙の動きがあるからです。アウレオルスさんの銃の弧を描く動作で大きく動きの向きが左下に流れますが、その流れを右に向けるのがステイルさんのカード。ここは激しい動きが多く、OPの要になっていますね。イノケンティウスに逆らうように上条さんが何かを叫んでいますが、次の変わった右向きのアングルで入ってくるのはアクセラレータさんですね。彼との戦いが最も時間をかけていますから、このクールの最後の敵役が彼だとわかります。最後に大きく回りこんで、上に覆いかぶさったアクセラレータさんに対し、上条さんが中、下へと動いて、左右に首を振ったインデックスさんが蹲る絵で終わります。
最後の1シーン前、上条さんが画面下へと腕を動かすところは、このOP全体でも無い動きです。おそらくは若干の違和感を感じるところです。その直後、インデックスさんが左右に首を振るわけです。これはインデックスさんがヒロインの割りになかなか上条さん側に靡かないことを意味しているわけですね。全体としても、インデックスさんとの出会いと、最後のシーンの拒絶を描いている形で、彼女の神秘さを表現しているのだと思います。続くOPを見れば、彼女が違う描かれ方をしているのを確認できるでしょう。
まるでこちらに手を伸ばしてくるような上条さんの最後の動きは珍しいですね。恐らく、狙いもそこでしょう。定番の解決法ではない、一筋縄ではいかないこのシリーズを表していると思います。スタッフもこの時点で"やる気"だったのだと窺えます。

全体としては良くできているOPだと思います。
ただ、一点だけ。作画の都合上仕方ないのですが、アクセラレータさんの攻撃、変ですね。鉄柱を叩き落すのはいいんですが、その後地面に触れた鉄柱が自然と上条さんへ飛んでいきます。彼の能力の有効射程が良くわからないのですが、作品中でもあれだけ離れた物体に対して働きかけるシーンは無いと思います。まぁ、超能力を良く表すためのシーンなので、望外の説得力が生まれているとは思いますが・・・。

ところで、「とある科学の超電磁砲(レールガン)」の初春さんと佐天さんが、白井さんの友達として登場してますね。この時点で結構先まで決まっていたんでしょうか。
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方針

 アレイスター統括理事長。
特に予備知識の無い状態なら、ちょっと変わった名前だなくらいに思うのかもしれません。ですが、オカルトを少しでも齧ったことがあるなら、忘れない名前のはずです。アレイスター=クロウリー、近代の大魔術士であり、とある宗教の教祖様であります。高名な魔法使いというのは半ば伝説的になってしまい、その実在が確認できないことがよくあるのですが、彼の場合は違います。特筆すべきは彼の生きた時代が近代ということです。言行などの記録が残っており、その存在は疑うまでも無いのです。
この時点での彼の露出はあくまで黒幕的なので、その詳解は後に譲るとします。
ただ、魔法使いが学園都市のトップである、というのは紛れも無い実体であるようです。
培養槽の中で逆様に浮かんでいるその姿からも、いろいろと読み取れるかと思います。

さて、この「インデックスさんとの出会い」というお話の最終幕にあたるシーンですが、いろいろと気になるポイントがあります。
まずは何よりも、アレイスター統括理事長の「イギリスから呼び戻したのは」という発言。
ステイルさんたちはインデックスさんの監視役のはずです。現状、上条さんとも友好的とは言えない関係のはずなので、少なくとも日本に滞在していると思ったのですが、これは、彼の配置転換にも近い人事のごたごたがあったようですね。ネセサリウスにとってもステイルさんは強大な戦力、そうそう暇を潰させてはいないと思うのですが、とりあえずお膝元まで、それこそ「呼び戻して」いたみたいです。幻想殺しに聖ジョージの聖域、彼にとっても悩ましい出来事が多かったですから、調べごとでもしていたのでしょうか。
ともかく、直前のおりひめ1号のニュースから、この2週間で日英を往復するだけのことがあった模様です。

話の本筋である「ディープ・ブラッド」について。
恥ずかしながら、この設定にあるようなお話を僕は知りません。ですが、ステイルさん自身が呪文の中で「吸血殺しの紅十字」と謳っているので、これは明確な伏線と言っていいでしょう。「ディープ・ブラッド」事件にステイルさんが関わるのは規定路線だと言うことです。

また、おりひめ1号と言えば、少し先の話になるのですが、御坂さんと深い繋がりがあります。これは偶然ドラゴンスレイヤーで破壊されてしまったのですが、それがなければ御坂さんの運命も好転しなかったことでしょう。
物語の開始直後から、高校生として相応しからぬ時間に出歩いている彼女ですが、別にこれは好き好んでこんな時間に通り合わせたわけでもなく、恐らく上条さんとの馴れ初め自体も、とある繋がりを持つ研究所の連続襲撃のためだったと思われます。
どこかモブ(群集)的な描かれ方をしていた彼女ですが、彼女なりに重大な目的を持って行動していたのです。詳細は後に譲るとします。

とにかくこの時点で二つのお話を伏線として潜ませてるわけです。なんとけれんの多いことか。
恐らくですが、ここまではいわば「オープニング」の類ですし、このお話を書き終わった時点ではまだ、シリーズの展開青写真が完成していなかったのではないかと思われます。御坂さんのストーリーは、まだこの時点では表面化していませんし、後のための種まきはしていますが「書かなければならない」とまでは言えません。
想像でしかありませんが、この原作者さんはアレイスター統括理事長の言っていた「世界のバランス」について描きたかったのではないでしょうか。具体的に言うと、「超能力者対魔法使いの戦争」です。その「どっちが強いの?」の中で幻想殺しをどう位置づけていくか、朧気ながら道程があったのでしょう。ですが、原作者と言えど、出版社の都合まではどうにもできません。一旦発行して人気の様子を見ながら、読者がこのシナリオに何を求めるのか様子を見るつもりだったに違いありません。
特に直後のお話は「一つの選択肢」として一つのパターンを構築しかけていました。書き終える前に、どうやら良い風を得られたようで、そのパターンを作中で破壊しています。それはインデックスさんを主軸にする形式でしたが、本来目標である上条さん主軸のストーリー構成が選ばれることになります。インデックスさんの扱いは見る間に可哀想なことになっていくのですが・・・ともかく、今後の上条さんの成長に期待することにしましょう。

奪われた記憶

 とりあえず、書き忘れていたステイルさんが行おうとした記憶消滅の術式について、先ず補足させてください。
と言っても、たいしたことはわからないのですが。とりあえず、彼が口にする「フローリィの書」(?)というもの・・・どこか聞き覚えのあるフレーズなのですが、はっきり覚えていません・・・クロウリーの書とも聞こえないでもないのですが、クロウリーが天使召喚に関する魔法を遺したとは考えにくいですし、彼の本にはきっちりタイトルがついていたはずです。とりあえず、魔導書であることは間違いないでしょう。聖書などの類ではありません。
また、「参照」と言っているので、このときステイルさんが行おうとした魔術は、おそらくアレンジを加えたものなのだろうという予想が出来ます。
壁に描いていた図形ですが、これは六芒星の一種です。六芒星は通常、一筆書き出来ないのですが、六つの点を線で結び、形状が変化するものの一筆で描けるように考案されたのがこの図形になります。別名、獣の印。形状が異なるというのは魔術として重要で、本来の六芒星は二つの三角形が向きを逆にして交差するので、「二つのものの調和」という意味を持ちますが、速描六芒星ではその意味は薄れます。ただ、同じ六芒星なのと、大きな角が二つあることから同じ意味を残し、且つ歪ながらも「6」を象徴します。一筆書き出来ることから、図形全体が「一つ」であるという意味も忘れてはなりません。二つでありながら一つ、というところでしょうか。代表的な六芒星に、ユダヤ教のシンボルマークである「ダビデの星」がありますが、それらとは一線を画したものであることも重要だと想われます。同じように錬金術でも、「二つのものの融和」というシンボル自体を重視するので、魔術的な意味合いが強い図形と言えます。

また、若干重複するかもしれないのですが、カエル先生の台詞を聞くと、おそらくドラゴンブレスが頭蓋骨や頭皮を飛び越えて脳細胞を破壊したととれます。そもそも頭蓋骨に穴が開いていたら、いくらなんでも絶対安静です。出血も夥しいでしょうし、同時に脳全体への酸欠や副次的な損傷が危ぶまれます。勿論、スタンガンなんてものを突っ込んだら脳波に支障が出るでしょうから冗談なのでしょうが。ともかく、ドラゴンブレスは脳を保護する骨や肉を無傷で残し、当該する脳細胞だけを焼き尽くしたのだろうと思われます。カエル先生の様子からは、攻撃が一箇所に集中していただろうことも伺えます。記憶全体を抹消しようとすれば、脳のいろんな部位に攻撃を仕掛ける必要がありますが、それは行われていない模様です。頭蓋骨を飛び越えておきながら、意外と物理的な攻撃のようです。
ここで、電撃のようなもので頭蓋骨を貫通したのではないか、という疑問も沸くかと思いますが、電撃が流れた後には必ず火傷が残ります。あえて「頭蓋骨でも開けて」と言ったのはそういう意味ではないかと予想します。
こうして考えていると浮かぶのは、「魔導書を読むと脳が焼き切れる」という、このシリーズ通して使われる表現です。上条さんは魔導書を読んだわけでは無いですし、この場合は当たらないのですが、インデックスさんがそういう表現を使うということは、記憶消滅の後に残る記憶にそれがあったということになります。ステイルさんたちも確か同じ表現をしますが、彼らが実際に脳を汚染される現場を見ているとは限りません。もしかすると、これもネセサリウスが仕組んだ欺瞞だったのかもしれません。聖ジョージの聖域の最終段階で引き起こされる「記憶の焼却」を予め吹聴しておくことで、魔導書に興味を持つことを牽制していた。「真実味のある嘘」になりますから、効果は大きいのではないかと思います。

それはさておき、とうとう、病院送りが出てしまいましたね。
ここは学園都市です。当然病院も学校付属のものが多いでしょうし、おかしな怪我を負えばそういった最先端医療の研究をしている場所に送られるのは自明の理。場所はカエル先生の病院だったようですが、これで学園都市サイドに情報が流れたことは間違いありません。おまけにどうやらステイルさんたちとカエル先生が直接接触したようですし、インデックスさんも会っています。更に、この3人がIDを持たない不法侵入者であることもバレています。
情報流出という意味では、相手がカエル先生だったことは幸運だったでしょう。確かに地位のある人で理事会あたりにも迅速に情報が伝わったでしょうが、逆に小さな診療所で上条さんを持て余すことになると、病院の段階で騒動が大きくなります。もし神経質に根掘り葉掘り調査されたら、下手をすると孤立する可能性だってありました。問題が表面化すると徒に騒動の規模が大きくなるだけで、何の利も無いのです。地位があり、人格者であるカエル先生にあたったことは、この上ないラッキーでした。モルモットにされることもありませんでしたしね。

そういう意味では、インデックスさんが学園都市に潜り込んだ方法というのは、かなりのミステリーです。彼女は対魔法使い用のテクニックはあっても、魔法はこれといって使えません。侵入者としては甚だ素人であり、彼女が検問を素通りできたのは、手段はどうあれ問題と言わざるを得ません。
つまり、学園都市の警備という側面です。
そこでちょっと見方を変えてみます。前述したように、ネセサリウスは禁書目録を持て余しています。かと言って他の魔術結社に託すわけにはいきません。そんな当てがあったらとっくの昔に同盟関係を築いているでしょう。そこで、賭けになりますが、魔導書の価値のわからない学園都市へインデックスさんを追いやったのではないでしょうか。それが思うように行かず、運悪く記憶消滅作業の周期で幻想殺しにぶつかってしまった・・・という一つの仮定です。
その仮定によるなら、インデックスさんの潜入はあえて見過ごせることになるので、解決します。裏で糸を引いているのはアレイスター統括理事長なので、理事会にとって禁書目録が魅力的でないとしても、彼にとっては、一応手の内に置いておいて損をするものではありません。魔術結社に指摘しても白を切りとおせるかもしれません。かと言って、計画に直接寄与するものではないので、早急に調べ上げる緊急性はありません。
反面、インデックスさんにとってはこの上ない仮の宿です。あらゆる魔術師にとって最も攻め込みづらい場所であるため世界一安全な都市です。理事会も「とある計画」を大至急遂行中で禁書目録に関わっている暇は無く、政治的に利用される心配もありません。魔法的には「ド田舎」ということですね。そこに、警備網というおまけがついているのですから願ったり叶ったりです。
インデックスさんにとってのメリットは、大体はネセサリウスにとっても同じです。神裂さん曰く理事会と接触を図ったそうですから、そもそも繋がりを仄めかしていたと言えます。本来なら理事会とネセサリウスは敵対関係、情報の共有など以ての外のはずです。下っ端が出向いても応対してもらえそうもありません。神裂さんにしても軽率に接触など出来ないはずです。このことから、理事会とネセサリウスの間で予め話が通っていたことが窺い知れます。
理事会に話が通っているなら、アレイスター統括理事長の耳に入っていないわけがありません。何らかの積極的な働きかけはないにしても、幻想殺しと禁書目録が接触したことも知っているでしょう。まぁ、彼にとってはこの二つ、あまり重要ではない部類に入るのですが。ドラゴンスレイヤーの一撃がおりひめ1号を撃墜するのも生で見ていたのかもしれませんね。こっちは少々堪えたことでしょう。その腹いせに、これから幻想殺しを戦場に引き込むことにしたのかもしれません。
ただ、禁書目録に対して幻想殺しが相当踏み込んだことについても、ネセサリウスや理事会の反応が見られないことから、両者の結託というのはそれほどまでに強いものではないと思われます。彼らの行動計画においても優先度は高くないのではないでしょうか。ネセサリウス側は「すぐにでも連れ戻したがっていた」そうですが、あっさり引き下がっていますしね。恐らくですが、連れ戻したくなった理由は、禁書目録の結界が全滅したことからだと思われます。ですがまぁ、破壊されたのは対魔術師用の側面が色濃い結界で、しかも科学サイドにとっては禁書目録はさほど価値はないはず。手をつければもれなく政治的脅威が頭をもたげてきますから、当初の予定通り現状維持(様子見)に落ち着いたのでしょう。

そういえば、ステイルさんからのラブレター末尾に書かれていたルーンはケンでした。「松明」或いは「腫れ物」を意味します。何度も言うようですが、ルーン自体に自己消滅の意味は無く、基本的にステイルさんがかけた魔法の一部として機能しているだけです。ケンのルーンが目に触れたら起動するようにでもしてあったんでしょうね。

ですが、この爆発の後のインデックスさん、浮かない顔です。手紙の内容をすべて理解できるとは限らないはずですが、大まかなところは読み取ったんでしょうね。上条さんが自分のために入院するまでの負傷をしたと言うことを。
直後の上条さんですが、彼はこの時点で、ステイルさん神裂さんから得た情報を知っているはずです。(そういえば二人は上条さんの記憶喪失について何も知らないようですね。)インデックスさんの顔は知らないはずなので、白い修道服姿の外人さんが入ってきたのに対し「病室を間違えていませんか?」というのはごく普通な受け答えだと思います。むしろ、彼の性格からすれば、この時点で最も恐れているのは知己に会うことだと思います。出来うる限り隠し通そうと。なので、病室に来る人物がそうである確率が高いにもかかわらず、恐る恐る「俺たちって知り合い?」と切り出しました。思えば、最初のノックの後の反応が遅かったのも、そういう都合からだったかもしれませんね。彼にとって重要だったのは「私のために魔術師と戦ってくれたんだよ」だと思います。これが決定的に目の前の人物との関連性を理解せしめたはずです。その後の生返事は、故意でしょう・・・。しかし、インデックスさんも感極まって、ほぼ告白までしちゃっていますね・・・それをわかっていながらしれっと流してしまうあたりが、上条さんの今後の展開を決定付けているのかもしれません。
ちなみに、上条さんは「ドラゴンブレスが脳に影響を及ぼす前に幻想殺しでそれを無効化した」と言っていましたが、これは明確に嘘ですね。(本当にそうすればよかったのですが)上条さんはドラゴンブレスに気付かず直撃を受け、昏倒するところまで描かれていますから、間違いはないです。
そういえば、カエル先生は「記憶喪失と言うより記憶破壊」と言っていましたが、症状は記憶喪失に酷似していますね。仮にも脳みそに魔法食らったわけですから、もっと陰惨なことになっていてもおかしく無いですし、そもそもわざわざ記憶だけを消すなんて器用なことをする必要があったのでしょうか・・・。
シナリオ上でも、上条さんの記憶を奪ったことが生きてくる話は殆どありません。エンゼルフォール事件のときくらいのものです。一年周期で記憶を消されていたインデックスさんの気持ちがわかる、ということもありますが、今ひとつピンと来る解決はないですね。まだ登場させていない何かがあるのかもしれません。続編に期待するとしましょう。
上条さんの脳は、魔法によって物理的に破壊されました。勿論、一部分だけですが。自我もしっかりしているし運動機能も問題なし。情緒の乱れや言語能力の不全、奇行もありません。思考も確かですし、更に言うなら記憶力も問題なく働いているようです。本当に以前の記憶を奪われた以外何の症状も見られません。ある意味奇跡です。
過去の記憶が脳細胞ごと死んだというのに記憶力と言うのは・・・と思われるかもしれませんが、たった今会話したインデックスさんのことを覚えていますから間違いないです。仮にもし、記憶力を司っていた場所が全滅させられていても、脳と言うのは他の場所にそれら機能を移すことができます。破壊された脳の部位を棄て、新たな記憶領域を形作り始めたともいえます。この分なら今後、この攻撃の後遺症が上条さんを悩ませる心配はなさそうです。

しかし引っかかるのは、インデックスさんの「この一年の過去」です。
少なくとも350日間程度も彼女は逃避行を繰り返しているのです。すべてが逃避行であったとは限りません。ステイルさん神裂さんがよしとする保護先ならば、彼らの陰の庇護の下、滞在することも出来たでしょう。人懐っこい彼女のことですから、そういった関係性を構築する可能性は高いです。人並みに寂しがり屋でもありますしね。
逃避行と言うものは、そもそもが並大抵の精神力で出来るものではないです。それこそ強い信念や決意が無ければ長続きするものではありません。精神の消耗戦であり、篭城よりも疲弊するものです。彼女はずっとそんな戦争の中にいたことになります。
恐らくですが、彼女が自身の禁書目録に対して出来ることや、他者に協力を求めるなどは一通りこの一年のうちに試しているはずです。そしてそのどれもが上手く行かず、恩人に負傷や負債を負わせたり、または恩人に裏切られるなど、いろいろなことがあったはずです。そのどれもが悲劇であったはずです。
上条さんとの初対面の際に「教会まで行けば助けてくれるから」というのは、恐らく嘘だったと思われます。勿論、同じ宗教の信徒同士ですから、仮滞在くらいは出来たかもしれませんが、すぐにそこも出なければなりません。禁書目録について深く関われば、少なくともインデックスさんの経験上例外なく不幸に苛まれますから。
また、ネセサリウスという可能性も、恐らくこの一年間に潰えていたと思います。想像するしかないのですが、おそらく表向きにはそういう組織は存在しないことになっていたかもしれません。何れにせよイギリスまでの果てしない距離があるのですが。最も直球で庇護を求めるべき対象ですから、1、2ヶ月くらいで接触を試みたと思われます。しかし、ネセサリウスには彼女の保護は出来ないはずです。何らかの形で彼女の思いは裏切られているはずです。ステイルさんと彼女の間に接点があったのは、そうした関係上当然とも言えます。
そんな苛烈な過去を持つのですから、上条さんに対して頑なだったのは致し方ないことです。彼女にとって、協力者が禁書目録にどういう反応を示すのかは重大な関心事ですし、同時にそれを打ち明けることもその協力者にとっては災難を呼ぶ可能性がありますから。
しかし、です。
一年と言うのは短いようで長いです。常人であれば理由も無く押し付けられた逃避行にそう耐えられるものではありません。上条さんと会うまでにも、相当な人数と接触を持っているはずです。禁書目録目的の魔術結社、または善意の保護者。単純に巻き込まれた人たち。何かしらの知己とも言うべきそれらの人たちが、今後一切登場する気配を見せません。恐らく、上条さんの記憶を(シナリオ上)消したのは、それらへの言及を避けるためでもあるのでしょう。
恐らくインデックスさんにとっても嫌な思い出でしかないのでしょう。ここはそっとしておくほかありませんね。

いい加減長いので、ちょっと区切ります。いつもながら長文で申し訳ありません・・・。

特定魔術・聖ジョージの聖域

 先ず最初に、インデックスさんの出身とされる大聖堂や、ここで上条さんを拒絶する最後の砦として使用される魔法の名前に出てくる、聖ジョージという人物とその背景について簡単に説明しましょう。

聖ジョージ、または聖ゲオルギウスというのは、実際にキリスト教で描かれる聖人の名前です。少しほかの聖人たちと毛色が違うのは、彼が竜退治をした聖人であるということでしょう。キリスト教と竜?と疑問を抱かれる方がおられるかもしれませんが、竜というモデルはいろいろな宗教に形を変えて登場しています。キリスト教についても例外ではなく、また、イスラム教ではイスラム教の創始者たちが揃って竜殺しだったというほどです。聖ゲオルギウスという名前自体あまり聞かれないと思いますが、もしかしたら民話に近い話なのかもしれませんね。ですが、キリスト教と竜は結構関係があります。レッドドラゴンというと竜の定番のカラーリングですが、キリスト教においてはイヴを唆した古き竜、サタンのことをさします。悪魔も悪魔、大悪魔ですから、迂闊に取り扱えません。
さて、ともかく聖ジョージというのは、そんな背景を持つので、作中で「ドラゴンブレス」と説明されたりしています。実際は、聖ジョージ自身が竜に勝っているので、「ドラゴンブレス」は副産物に過ぎないでしょう。相手が幻想殺しであったために一瞬で解呪されていますが、本来なら小萌先生宅の屋根程度じゃ済まない騒ぎになっていたでしょう・・・。

ちなみに聖ジョージの聖域そのものですが、全くわかりませんね・・・発動らしきシーンではヨハネのペンの両目に浮かんでいた魔法陣らしきものが拡がって、割れた硝子のような黒い文様が浮かび上がりますが、どちらが聖ジョージの聖域なのかもわかりません。そもそも、聖ジョージの聖域という魔法自体聞いたことがないですし、見るからにとんでもない代物ですから、モデルにした何かがあるのかすら判断できません。
ただ、ヨハネのペンが対処を判断する以前、結界貫通直後に覚醒時から両目に浮かんでいたので、これではなく黒い文様のほうが聖ジョージの聖域本体であるのだと思います。文様自体は他に何も起動していませんしね。おそらくは、ヨハネのペンと聖ジョージの聖域の間に密接な関係があるのでしょう。魔法構成的に。インデックスさんと聖ジョージ大聖堂にも関わりがありますから、これがネセサリウスにとってのリーサル・ウェポンであり、とりあえず困ったらこれを発動するようにしたのではないのでしょうか。「最も適当な」というのは、ひとまず物理的に最大の火力を展開しようという意味だったと思います。
わからないついでにもう一つ。
インデックスさんに施されていた3層の結界のコアらしきもの、口の中に見えた記号ですが、とりあえず木星を表す惑星記号だったことだけご報告します。ルーンではないのでステイルさんと違う術者を仄めかしているのですね。木星と言うとゼウス/ユピテル(ジュピター)を指し、ギリシア・ローマ各神話で最高神にあたります。雷や主権を司るのですが、これまた一瞬で幻想殺しに破壊されてしまうので、結界がどういうものだったのか、わかりませんね・・・

また、途中幻想殺しに攻撃が効いていないことから、ヨハネのペンは聖ジョージの聖域から他の術式へと変更を匂わせます。直後にステイルさんたちの叛乱を汲んで聖域を第二段階へと進めますが、これを見るに、ヨハネのペンも困ってますね。他の術式の起動を許したらもう少し複雑になっていたと思います。まぁ実際、一瞬で起動できる魔法なんてそうはありませんし、儀式を行う余裕もありませんでしたしね。
正直、敵勢力としてはいろんな意味で神裂さんが最凶だったと思いますが、幻想殺しは分析自体が出来ないですから、そういう意味で憂慮したのでしょうね。実質魔法使いにしてみたら難敵であることは間違いないですし。
残すステイルさんへの対処ですが、間違いなく見切られましたね。
「曲解した十字教のモチーフをルーンにより記述したもの」
恐らく、イノケンティウス8世のことですね。実際、イノケンティウス(インノケンティウスとも)8世は異端審問や魔女狩りなどを盛大に行った教皇です。炎に繋がりがあるとすれば火刑くらいですがそれほどでもなく、むしろ「炎に宿らせる」といった方が正確でしょうね。イノケンティウス8世については、他にもいろいろな特徴があるので、「曲解した十字教のモチーフ」という表現は、実に正論であると思います。また、同時にルーンでケン・アンサズを記述していることも見抜いています。

聖ジョージの聖域の第二段階へ移動するときにヨハネのペンが唱える「える・える・えむ・さばと」ですが、ちょっと判然としませんね・・・誤解を恐れずに言うなら「エル・エロヒム、サブート」ではないでしょうか。エルは、神と関わりのある言葉で、あえて言うなら「偉大なる」というような意味です。確かヘブライ語です。3番目の言葉がエルかエムかで変わってくるのですが、都合上エル・エムではなく「エロヒム」ではないかと。これはキリスト教の三大要素の一つ「聖霊」の一種で、特に断りの無い場合「神」自身を意味します。ここでは、偉大なる神の力、とでも言うべきなのでしょうか。
都合と言うのは、エムだとちょっと思い当たるところが無いためです。エルだと「偉大な」を三回繰り返すことになるので意味も通じるのですが、その後の「サバト」が問題になります。
これがサバトであった場合、ちょっと困ったことになります。元来はユダヤ教の安息日のことを指します。ですが、キリスト教になると、安息日の乱痴気騒ぎからでしょうか、偶像を祭って悪魔を呼び甚だ不道徳なパーティを催すというようにとられるようになりました。安息日と言う意味のサバトでも、よくわからなくなりますね・・・。
ちなみに、僕の上げたサブートというのは、ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)に登場する呪文の一つで、確か悪魔を強制する聖句の一つだと思います。召喚魔法に用いられるので、より魔法的で意味も通りやすいかとおもったのですが。
全体で見ると「偉大なる聖霊よ、来たれ」という感じになると思うのですが、正否はいかほどに。

画面で見る分には、聖ジョージの聖域はその術式だけで様々な効果をもたらすことの出来る柔軟性に富んだものであるように受け取れます。または、本格始動の前にも効果が現れるものか。ひとまず、白い光線、輝く羽根、赤い光線の三つは確認できます(もしかしたら、黒い文様にも効果があったのかもしれませんが)。
神裂さんはその舞い落ちる輝く羽根を見て「ドラゴンブレス」と驚愕します。また、「その一枚に触れるだけでも大変なことに」と言っていますから、恐らく「ドラゴンブレス」とは輝く羽根のことを指しているのではないかと思います。前述したように、聖ジョージの奇跡は「竜を倒した」ことですから、「ドラゴンブレス」はおまけなのです。
それを上回る威力を持つのが、恐らく白と赤の光線です。二種類の違いはよくわかりませんが、これこそ竜を退治した聖ジョージの逸話の核心、この魔法の目的であるドラゴンスレイヤーそのものではないでしょうか。実際、神裂さんの「ナナセン」によって逸らされた攻撃は上方に流れ、人工衛星を一つ木っ端微塵にしています・・・。
描写上では速度が伺えないので正確なことはわからないのですが、監視用と言っているので、静止衛星だったかと思われます。大体は、高度1000km以上のはずです・・・途中に障害物がない(飛行機・・・)とはいえ、その距離でその収束と威力・・・まぁ・・・ドラゴンも殺せるわけです・・・。
更には、それを2m程度の距離で打ち消している幻想殺し・・・イノケンティウスもそうですね。彼らはドラゴン以上の強度を持っているわけです・・・
地球は確かに球状をしているので、安直にはいえませんが、これは戦略級の魔法です。

さて、そんな聖ジョージの聖域のドラゴンブレスをみすみす食らってしまった上条さんですが、カエル先生曰く「頭蓋骨を空けて」「スタンガンでも突っ込んだ」なので、あれはたまたま頭に当たったのではなく、そもそも記憶消去用の魔法を浮遊機雷のようにバラ撒くものだったのではないかと思います。
考えても見れば、当然です。ネセサリウスが危惧すべき事態には、10万3000冊の一部が周囲に流出している可能性も含まれます。インデックスさんを含んだ周囲の人間の記憶を消し尽くしてしまおうという発想は自然です。ドラゴンブレスと言う名前からはこの効果を連想できないので、応用でもしたのでしょうか。それとも、ヨハネのペン消滅直前に呟いていた「最終段階」というのが、撒き散らしたドラゴンブレスを目標(この場合上条さんしか指定しきれなかった)の脳に向けて放つことを意味していたのでしょうか。
ただ、そうだとしたらちょっとお粗末です。科学を基にしたのならともかく、魔法でなら精神そのものを攻撃して完全に記憶喪失に出来たはずです。
というのは、現在の科学では、記憶や気持ちなど心の問題を取り扱いきれていないからです。脳自体を破壊しても、記憶が消えるかどうか、正直保証がありません。とりあえず記憶を飛ばすことは出来ますが、小萌先生が言っていたように記憶には種類があり、保存される部位が異なります。また、それら部位が移動する例や、神経にも記憶が留まると言った例まで、いろいろ研究中でもあり、脳科学そのものを問う動きまである始末です。少なくともMRIだけでは観測しきれないことはわかりました。
上条さんがインデックスさんを想う気持ちについて、ご本人が言っているように、これは心の問題なのです。
通常の脳科学の観点から見ても、特定一部の記憶を焼き尽くしたとして、それらに繋がる、いわば連想の糸・・・シナプス同士の繋がり、構成自体はどうなるのか、ちょうど抜け落ちた情報なら、その消滅の崖っぷちを確かめることで推論できないか、いろいろと疑問が残ります。実際上条さんはコールド・リーディングと呼ばれる方法でインデックスさんを煙に巻きました。人間関係でも情報は残りますから、そうして彼は記憶を「取り戻して」いくのですが、ネセサリウスは少し聖ジョージの聖域の調整をしたほうがよさそうですね。(もちろん、次はないのですが。)

一年周期

 それにしても不思議なのは、インデックスさんの記憶を「一定周期でしか消せない」というものです。
ステイルさん神裂さんに知らされていたことはネセサリウスの欺瞞でしかなかったわけですから、記憶を消す周期自体が存在するのかどうか疑わしくなります。これはネセサリウスが任意で設定した時間のはずです。
ステイルさんが魔法の準備を始めたときに、「獅子座の力を借りて」と言いますから、そこに答えを求める遣り方もあると思います。ですが、星座と言うのはインデックスさんのいる位置によって見えるものが異なってきますから、若干難があるように思います。また、夜空に見える星座ではなく黄道12宮を使った占星術的なシンボルとも捉えられます。ですが、このタイミングを逃してしまうことは、むしろネセサリウスの危機に繋がりかねません。星座などを使った魔法の使用条件となると、何かしらの形で施術を行えなかった場合のフォローが難しくなると思うのです。それに、記憶を消滅する魔術自体は、それなりにあるはずです。
「彼女が死んでしまう」と言う凄まじい強制力をステイルさん神裂さんに与えているので、彼らは恐らくこの周期を全身全霊を持って堅持するでしょう。それはそれとして、上層部としてはそれが失敗したケースについても考慮しておくべきです。
一つの可能性として、彼女を殺してしまうつもりだったというのがあります。3層もの結界をもってして、自爆機能をもたせたわけです。当然の事ながらネセサリウスは、監視役の二人が撃破され何らかの魔術結社に囚われてしまうことも恐れていたはず。殺すまではいかずとも、心身停止や想起妨害などの保護をすることはしたほうがよいでしょう。10万3000冊をとられるまでは、恐らくですが彼女の命は保証されますから・・・。
とにかく、「一年周期」という期間については、ネセサリウスにとってはなんら拘束される理由は無いと思うのです。恐れていたのは、インデックスさんの裏切りや、彼女を組み込んだ組織が形成されること。その布陣が整う前に記憶を消すことで、監視役の二人も含めたインデックスさんの周囲の人物とのコミュニケーション不全を目論んだものでは無いでしょうか。
以前に神裂さんが言っていたことを思い出すと、インデックスさんには対魔術用結界が施されていることが予想できます。記憶操作系の魔術を無効化するものです。あの3層の結界は、そういった性質を含んでいたと思われます。或いは、あの3層の結界のほかに記憶操作妨害の施術があって、ともかくその結界が「記憶消滅魔術」に対してひと時だけ防御を限定解除するタイミングが、この「一年周期」の日なのかもしれません。
しかし今ひとつ、この周期についての記述がないので、確かなことは言えません。恐らく、インデックスさんを「作った」誰かというところに言及してしまいかねないため、今は伏せてあるのでは無いでしょうか。また多分になるのですが、インデックスさんに10万3000冊を記憶させたのはネセサリウスではないと思われます。そもそも10万3000冊を集める能力を持っていたら、インデックスさんはそれほど重要でなくなるからです。
彼女の戦略的価値や生い立ちなど、続編が楽しみになりますね。

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プロフィール

HN:
精神毒
性別:
男性
自己紹介:
 精神毒(Platonic-Poison)。神経毒ではありませんからご心配なく。勿論ただのハンドルネームなので、思いつきで変えるかも。
 「とある魔術の禁書目録(インデックス)」「とある魔術の禁書目録(インデックス)II」について書くつもりです。「とある科学の超電磁砲(レールガン)」についても触れるつもりですが、どこまで書くのかはわかりません。
 アニメ版限定でお送りします。ライトノベルや他のメディアミックス関連には触れないつもりです。また、極力他サイトの情報は(アニメ版より早く知るとつまらないので)読まない方針です。
 ちなみに、フィギュアは要らない派です。

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