アレイスター統括理事長。
特に予備知識の無い状態なら、ちょっと変わった名前だなくらいに思うのかもしれません。ですが、オカルトを少しでも齧ったことがあるなら、忘れない名前のはずです。アレイスター=クロウリー、近代の大魔術士であり、とある宗教の教祖様であります。高名な魔法使いというのは半ば伝説的になってしまい、その実在が確認できないことがよくあるのですが、彼の場合は違います。特筆すべきは彼の生きた時代が近代ということです。言行などの記録が残っており、その存在は疑うまでも無いのです。
この時点での彼の露出はあくまで黒幕的なので、その詳解は後に譲るとします。
ただ、魔法使いが学園都市のトップである、というのは紛れも無い実体であるようです。
培養槽の中で逆様に浮かんでいるその姿からも、いろいろと読み取れるかと思います。
さて、この「インデックスさんとの出会い」というお話の最終幕にあたるシーンですが、いろいろと気になるポイントがあります。
まずは何よりも、アレイスター統括理事長の「イギリスから呼び戻したのは」という発言。
ステイルさんたちはインデックスさんの監視役のはずです。現状、上条さんとも友好的とは言えない関係のはずなので、少なくとも日本に滞在していると思ったのですが、これは、彼の配置転換にも近い人事のごたごたがあったようですね。ネセサリウスにとってもステイルさんは強大な戦力、そうそう暇を潰させてはいないと思うのですが、とりあえずお膝元まで、それこそ「呼び戻して」いたみたいです。幻想殺しに聖ジョージの聖域、彼にとっても悩ましい出来事が多かったですから、調べごとでもしていたのでしょうか。
ともかく、直前のおりひめ1号のニュースから、この2週間で日英を往復するだけのことがあった模様です。
話の本筋である「ディープ・ブラッド」について。
恥ずかしながら、この設定にあるようなお話を僕は知りません。ですが、ステイルさん自身が呪文の中で「吸血殺しの紅十字」と謳っているので、これは明確な伏線と言っていいでしょう。「ディープ・ブラッド」事件にステイルさんが関わるのは規定路線だと言うことです。
また、おりひめ1号と言えば、少し先の話になるのですが、御坂さんと深い繋がりがあります。これは偶然ドラゴンスレイヤーで破壊されてしまったのですが、それがなければ御坂さんの運命も好転しなかったことでしょう。
物語の開始直後から、高校生として相応しからぬ時間に出歩いている彼女ですが、別にこれは好き好んでこんな時間に通り合わせたわけでもなく、恐らく上条さんとの馴れ初め自体も、とある繋がりを持つ研究所の連続襲撃のためだったと思われます。
どこかモブ(群集)的な描かれ方をしていた彼女ですが、彼女なりに重大な目的を持って行動していたのです。詳細は後に譲るとします。
とにかくこの時点で二つのお話を伏線として潜ませてるわけです。なんとけれんの多いことか。
恐らくですが、ここまではいわば「オープニング」の類ですし、このお話を書き終わった時点ではまだ、シリーズの展開青写真が完成していなかったのではないかと思われます。御坂さんのストーリーは、まだこの時点では表面化していませんし、後のための種まきはしていますが「書かなければならない」とまでは言えません。
想像でしかありませんが、この原作者さんはアレイスター統括理事長の言っていた「世界のバランス」について描きたかったのではないでしょうか。具体的に言うと、「超能力者対魔法使いの戦争」です。その「どっちが強いの?」の中で幻想殺しをどう位置づけていくか、朧気ながら道程があったのでしょう。ですが、原作者と言えど、出版社の都合まではどうにもできません。一旦発行して人気の様子を見ながら、読者がこのシナリオに何を求めるのか様子を見るつもりだったに違いありません。
特に直後のお話は「一つの選択肢」として一つのパターンを構築しかけていました。書き終える前に、どうやら良い風を得られたようで、そのパターンを作中で破壊しています。それはインデックスさんを主軸にする形式でしたが、本来目標である上条さん主軸のストーリー構成が選ばれることになります。インデックスさんの扱いは見る間に可哀想なことになっていくのですが・・・ともかく、今後の上条さんの成長に期待することにしましょう。
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