先ず最初に、インデックスさんの出身とされる大聖堂や、ここで上条さんを拒絶する最後の砦として使用される魔法の名前に出てくる、聖ジョージという人物とその背景について簡単に説明しましょう。
聖ジョージ、または聖ゲオルギウスというのは、実際にキリスト教で描かれる聖人の名前です。少しほかの聖人たちと毛色が違うのは、彼が竜退治をした聖人であるということでしょう。キリスト教と竜?と疑問を抱かれる方がおられるかもしれませんが、竜というモデルはいろいろな宗教に形を変えて登場しています。キリスト教についても例外ではなく、また、イスラム教ではイスラム教の創始者たちが揃って竜殺しだったというほどです。聖ゲオルギウスという名前自体あまり聞かれないと思いますが、もしかしたら民話に近い話なのかもしれませんね。ですが、キリスト教と竜は結構関係があります。レッドドラゴンというと竜の定番のカラーリングですが、キリスト教においてはイヴを唆した古き竜、サタンのことをさします。悪魔も悪魔、大悪魔ですから、迂闊に取り扱えません。
さて、ともかく聖ジョージというのは、そんな背景を持つので、作中で「ドラゴンブレス」と説明されたりしています。実際は、聖ジョージ自身が竜に勝っているので、「ドラゴンブレス」は副産物に過ぎないでしょう。相手が幻想殺しであったために一瞬で解呪されていますが、本来なら小萌先生宅の屋根程度じゃ済まない騒ぎになっていたでしょう・・・。
ちなみに聖ジョージの聖域そのものですが、全くわかりませんね・・・発動らしきシーンではヨハネのペンの両目に浮かんでいた魔法陣らしきものが拡がって、割れた硝子のような黒い文様が浮かび上がりますが、どちらが聖ジョージの聖域なのかもわかりません。そもそも、聖ジョージの聖域という魔法自体聞いたことがないですし、見るからにとんでもない代物ですから、モデルにした何かがあるのかすら判断できません。
ただ、ヨハネのペンが対処を判断する以前、結界貫通直後に覚醒時から両目に浮かんでいたので、これではなく黒い文様のほうが聖ジョージの聖域本体であるのだと思います。文様自体は他に何も起動していませんしね。おそらくは、ヨハネのペンと聖ジョージの聖域の間に密接な関係があるのでしょう。魔法構成的に。インデックスさんと聖ジョージ大聖堂にも関わりがありますから、これがネセサリウスにとってのリーサル・ウェポンであり、とりあえず困ったらこれを発動するようにしたのではないのでしょうか。「最も適当な」というのは、ひとまず物理的に最大の火力を展開しようという意味だったと思います。
わからないついでにもう一つ。
インデックスさんに施されていた3層の結界のコアらしきもの、口の中に見えた記号ですが、とりあえず木星を表す惑星記号だったことだけご報告します。ルーンではないのでステイルさんと違う術者を仄めかしているのですね。木星と言うとゼウス/ユピテル(ジュピター)を指し、ギリシア・ローマ各神話で最高神にあたります。雷や主権を司るのですが、これまた一瞬で幻想殺しに破壊されてしまうので、結界がどういうものだったのか、わかりませんね・・・
また、途中幻想殺しに攻撃が効いていないことから、ヨハネのペンは聖ジョージの聖域から他の術式へと変更を匂わせます。直後にステイルさんたちの叛乱を汲んで聖域を第二段階へと進めますが、これを見るに、ヨハネのペンも困ってますね。他の術式の起動を許したらもう少し複雑になっていたと思います。まぁ実際、一瞬で起動できる魔法なんてそうはありませんし、儀式を行う余裕もありませんでしたしね。
正直、敵勢力としてはいろんな意味で神裂さんが最凶だったと思いますが、幻想殺しは分析自体が出来ないですから、そういう意味で憂慮したのでしょうね。実質魔法使いにしてみたら難敵であることは間違いないですし。
残すステイルさんへの対処ですが、間違いなく見切られましたね。
「曲解した十字教のモチーフをルーンにより記述したもの」
恐らく、イノケンティウス8世のことですね。実際、イノケンティウス(インノケンティウスとも)8世は異端審問や魔女狩りなどを盛大に行った教皇です。炎に繋がりがあるとすれば火刑くらいですがそれほどでもなく、むしろ「炎に宿らせる」といった方が正確でしょうね。イノケンティウス8世については、他にもいろいろな特徴があるので、「曲解した十字教のモチーフ」という表現は、実に正論であると思います。また、同時にルーンでケン・アンサズを記述していることも見抜いています。
聖ジョージの聖域の第二段階へ移動するときにヨハネのペンが唱える「える・える・えむ・さばと」ですが、ちょっと判然としませんね・・・誤解を恐れずに言うなら「エル・エロヒム、サブート」ではないでしょうか。エルは、神と関わりのある言葉で、あえて言うなら「偉大なる」というような意味です。確かヘブライ語です。3番目の言葉がエルかエムかで変わってくるのですが、都合上エル・エムではなく「エロヒム」ではないかと。これはキリスト教の三大要素の一つ「聖霊」の一種で、特に断りの無い場合「神」自身を意味します。ここでは、偉大なる神の力、とでも言うべきなのでしょうか。
都合と言うのは、エムだとちょっと思い当たるところが無いためです。エルだと「偉大な」を三回繰り返すことになるので意味も通じるのですが、その後の「サバト」が問題になります。
これがサバトであった場合、ちょっと困ったことになります。元来はユダヤ教の安息日のことを指します。ですが、キリスト教になると、安息日の乱痴気騒ぎからでしょうか、偶像を祭って悪魔を呼び甚だ不道徳なパーティを催すというようにとられるようになりました。安息日と言う意味のサバトでも、よくわからなくなりますね・・・。
ちなみに、僕の上げたサブートというのは、ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)に登場する呪文の一つで、確か悪魔を強制する聖句の一つだと思います。召喚魔法に用いられるので、より魔法的で意味も通りやすいかとおもったのですが。
全体で見ると「偉大なる聖霊よ、来たれ」という感じになると思うのですが、正否はいかほどに。
画面で見る分には、聖ジョージの聖域はその術式だけで様々な効果をもたらすことの出来る柔軟性に富んだものであるように受け取れます。または、本格始動の前にも効果が現れるものか。ひとまず、白い光線、輝く羽根、赤い光線の三つは確認できます(もしかしたら、黒い文様にも効果があったのかもしれませんが)。
神裂さんはその舞い落ちる輝く羽根を見て「ドラゴンブレス」と驚愕します。また、「その一枚に触れるだけでも大変なことに」と言っていますから、恐らく「ドラゴンブレス」とは輝く羽根のことを指しているのではないかと思います。前述したように、聖ジョージの奇跡は「竜を倒した」ことですから、「ドラゴンブレス」はおまけなのです。
それを上回る威力を持つのが、恐らく白と赤の光線です。二種類の違いはよくわかりませんが、これこそ竜を退治した聖ジョージの逸話の核心、この魔法の目的であるドラゴンスレイヤーそのものではないでしょうか。実際、神裂さんの「ナナセン」によって逸らされた攻撃は上方に流れ、人工衛星を一つ木っ端微塵にしています・・・。
描写上では速度が伺えないので正確なことはわからないのですが、監視用と言っているので、静止衛星だったかと思われます。大体は、高度1000km以上のはずです・・・途中に障害物がない(飛行機・・・)とはいえ、その距離でその収束と威力・・・まぁ・・・ドラゴンも殺せるわけです・・・。
更には、それを2m程度の距離で打ち消している幻想殺し・・・イノケンティウスもそうですね。彼らはドラゴン以上の強度を持っているわけです・・・
地球は確かに球状をしているので、安直にはいえませんが、これは戦略級の魔法です。
さて、そんな聖ジョージの聖域のドラゴンブレスをみすみす食らってしまった上条さんですが、カエル先生曰く「頭蓋骨を空けて」「スタンガンでも突っ込んだ」なので、あれはたまたま頭に当たったのではなく、そもそも記憶消去用の魔法を浮遊機雷のようにバラ撒くものだったのではないかと思います。
考えても見れば、当然です。ネセサリウスが危惧すべき事態には、10万3000冊の一部が周囲に流出している可能性も含まれます。インデックスさんを含んだ周囲の人間の記憶を消し尽くしてしまおうという発想は自然です。ドラゴンブレスと言う名前からはこの効果を連想できないので、応用でもしたのでしょうか。それとも、ヨハネのペン消滅直前に呟いていた「最終段階」というのが、撒き散らしたドラゴンブレスを目標(この場合上条さんしか指定しきれなかった)の脳に向けて放つことを意味していたのでしょうか。
ただ、そうだとしたらちょっとお粗末です。科学を基にしたのならともかく、魔法でなら精神そのものを攻撃して完全に記憶喪失に出来たはずです。
というのは、現在の科学では、記憶や気持ちなど心の問題を取り扱いきれていないからです。脳自体を破壊しても、記憶が消えるかどうか、正直保証がありません。とりあえず記憶を飛ばすことは出来ますが、小萌先生が言っていたように記憶には種類があり、保存される部位が異なります。また、それら部位が移動する例や、神経にも記憶が留まると言った例まで、いろいろ研究中でもあり、脳科学そのものを問う動きまである始末です。少なくともMRIだけでは観測しきれないことはわかりました。
上条さんがインデックスさんを想う気持ちについて、ご本人が言っているように、これは心の問題なのです。
通常の脳科学の観点から見ても、特定一部の記憶を焼き尽くしたとして、それらに繋がる、いわば連想の糸・・・シナプス同士の繋がり、構成自体はどうなるのか、ちょうど抜け落ちた情報なら、その消滅の崖っぷちを確かめることで推論できないか、いろいろと疑問が残ります。実際上条さんはコールド・リーディングと呼ばれる方法でインデックスさんを煙に巻きました。人間関係でも情報は残りますから、そうして彼は記憶を「取り戻して」いくのですが、ネセサリウスは少し聖ジョージの聖域の調整をしたほうがよさそうですね。(もちろん、次はないのですが。)
以前触れない、と言いましたがやっぱり気になるので雑にですが、タイムラインについてちょっと考えたいと思います。
ヨハネのペン戦で行われた ことは、発動・第一迎撃(白い光線)・「ナナセン」・イノケンティウス・第二迎撃・幻想殺しのみです。イノケンティウスの発動にそれなりの時間がかかって いるのは明白なのですが、「ナナセン」は一瞬と呼ばれる時間で展開できるはずです。戦闘内容だけをみると、数分内に済みそうです。
ただし、この エピソードで重要なのは、神裂さんステイルさんを説得し味方につけることにありますから、実質上会話にかけた時間が一番長いと思われます。ヨハネのペンの 台詞が上条さん方の会話を待っていてくれたわけじゃないのならば、放送時間より若干短めまで詰められそうです。
防御をイノケンティウスに任せた 後から、上条さんは小萌先生宅を走っているので、このシーンは叙情的な時間表現をされていると言えるでしょう。小萌先生宅の室内に、3:1もの局面を作っ て尚駆け抜けるだけの広さはありませんから・・・。長くて2m程度、歩数にして3歩もないでしょう・・・。
なので、イノケンティウス・・・「ナ ナセン」後、「行け、能力者!」という台詞の後は、ヨハネのペンの台詞があるだけ(上条さんの説得と同時だった可能性)なので、殆ど時間はかかっていない と思われます。第二迎撃の攻撃の行方の描写もありませんので、この攻撃はほぼ無効化されたと見ていいでしょう。
以上のことから、説得に3分程度+αあたりがこの戦闘の消費時間だと思ってよいと思います。
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